日記20191225

 いつもと変わらない平穏な午後であった。私は今日は例外的に早起きに成功し、手慣れた手つきで大学生にはやや贅沢ともいえる値段の高山烏龍を淹れ、伴奏の練習やらドイツ語の暗記やらに精を出していた。

 

 日常が破壊されたのはとある一件のLINE通知であった。差出人を見るとそれは、誰あろう、私の日常を破壊することに関しては右に出るものがいない、友人のUであった。

 「沼ですが。(しばし沈黙)正月はレッスンを休むと言っていましたが、もう二日になります。いつから錦糸町に来るのですか?」

 正直黙殺しようと思った。しかし、私がスマートフォンの画面をスリープするよりも先に第二通が来てしまった。

 「あなたは傲慢な上に嘘つきです。16時までに、渋谷三丁目のサイゼリヤに来なさい。」

 既読を付けてしまった。

 

 犬の散歩など家の面倒は終えた後、重い腰を上げて渋谷へ向かった。高校時代に幾度となく使ったサイゼリヤの暖簾をくぐり、店員に一言断って奥の席を覗きに行くと、彼は高校同期と共に6Vメタモンを厳選していた。マジで殺意が湧いた。

 ただ嬉しいこともあった。卒業以来一度も会えていなかった浪人生の友人Yに会えたことである。彼も例外ではなく6Vメタモンを厳選していた。たぶん合格への意思はないのであろう。Twitterで「A判取れた!」と喜んでいたので僕はてっきり受かるものだと思っていたのだが、どうやら後から聞いた話だと彼が目指す大学の他学部の判定であったらしい(彼は医学部志望だ)。

 

 あまり長居せずに錦糸町へ向かった。今日はそこそこ実のある練習ができたと思うが、レッスンの時間になって先生が突然核弾頭を投下してきた。

 「田村くんは、バイオリンも弾けるのよね?こんどの発表会で、門下生一同で合奏する部があるのだけれど、田村くんもどうかしら」

 いや、おかしい。そもそも僕は月謝も何も払っていないしあなたに入門した覚えはない。いや、できることならしたいけど、その先生は結構すごい先生なのでたぶん相当なお月謝がかかる。というかそういう問題ではない。断りたい。でも教わっている分際であまりでかい口をたたけないし、どうしよう……。

 

 足早に駅へ向かう帰宅の途で、最後まで否定の言葉が出てこなかった数十分前の自分を責めた。そんなクリスマスでした。来年のクリスマスは絶対一日中彼女と過ごします。それ以外のことはしません。メタモン厳選の手伝いとか死んでもしねえ。